「過酷な自然から生まれた色彩 ーパキスタン、アフガニスタン、ウズベキスタン」
2023年3月10日(金) — 7月14日(金)
毎週金曜日開館・完全予約制入館料:一般1500円/学生 1000円/障がい者とその介護者 500円(手帳をご提示ください。)
西アジアや中央アジアは、険しい地形や気候風土、イスラーム文化圏、さらには複雑な政治的背景などの要因から、私たちには物理的な距離以上に遠く感じられます。しかしそこには、古来より東西交易で栄えたシルクロードの歴史と文化が凝縮された、多様で美しい染織品があります。
パキスタンでは、自然の要塞に守られた固有の染織文化が残されました。とりわけ今展に並ぶ旧・北西辺境州(現カイバル・パクトゥンクワ州)の衣装は、絹糸による緻密な刺繍の華やかさが、山岳地帯ならではの暗い色調の布地から際立ちます。国境を隔てて隣接するアフガニスタンの山間部、ヌーリスタンの衣装は野趣に富んでいる印象ですが、ここにも精緻な刺繍が施されています。パシュトゥーンの遊牧系の人々による婚礼用衣装は、遊牧民ならではの自衛の意識から、魔除けやお守りを意味する装飾が多く見られます。その他、ウズベキスタンの華やかなスザニ、トルクメニスタンの代表的な衣装などを紹介します。
パキスタンが見舞われた大規模な洪水は記憶に新しく、アフガニスタンを含む中央アジアは、ソヴィエト連邦の侵攻と崩壊、米国同時多発テロ事件、それ以降も混乱が続いています。過酷な自然から生まれたかつての美しい染織品を概観していただき、荒れた地の足元には素晴らしい普遍的な営みが在ることに想いを馳せていただければ嬉しい限りです。