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「衣の原点 - 南太平洋諸島の樹皮布、編布など」

2017年11月30日 -2018年3月17日
会期中の木・金・土曜日 開館

編布[パンダヌス] バヌアツ共和国 20世紀中頃
樹皮布 コンゴ ピグミー族 1900年代
腰みの パプアニューギニア トロブリアンド島
上衣 インドネシア スラウェシ島
袋 ケニア マサイ族
撮影:笹谷遼平

 今回は、染色家で織物以前の布を求めて十数回に渡り、南太平洋諸島を探査した福本繁樹氏の「織物以前 ——タパとフェルト」展が京橋のLIXILギャラリーで企画され、当館でもリンクした展示はどうかと提案されたことに始まった。1984年、日本民藝館で初めて見たパンダヌス[表紙]の衝撃を忘れずに持ち続けていたこともあり即断し、展示の半分は福本氏の御好意で拝借したものが並ぶ。

 パンダヌスの制作風景を読ませて頂くと、この巨大なゴザの様な編布は、村中の人々が総出で、まるでピクニックかお祭り騒ぎの中で作られていく。料理を作る人、指揮をとる人、それぞれの持ち場で手を貸す人、このセセと呼ばれる婚資や儀礼に使われる布は皆の心を一つにする。やがてバナナの内皮に刻まれた型で遠い先祖から受け継がれた文様を散りばめ、茜色に染められていく。贈られた後は小屋の中にひっそりと積み上げられ、煤にまみれて実用に使われることもないが、パンダヌス作りの工程の全てが、物作りの原点の喜びを伝えてくれる。

岩立 広子



 織物以前のはなし—— 南太平洋から

 今日、目にする布は殆どが織物である。しかし、織物より遥かに古い歴史を有する織物以外の布がある。その一つがタパ(樹皮布)である。タパは世界各地で作られた原初的な布で、現在でも世界の熱帯地域を中心に伝えられ、近代まで機織り文化が伝えられなかった地域で主に衣料として利用されてきた。特に広大な海洋の中に孤立した文化を伝えた南太平洋地域でタパが発達した。

 ヴァヌアツ共和国中部のペンテコスト島などに伝えられているパンダヌスの葉を編んだ布[表紙]は、世界の染織の常識を覆すユニークなものである。パンダヌスの編布には極めて複雑多彩な組織が見られる。さらにその染色技法も世界に類がない。オセアニアでは一般に絞り染めはされておらず、織物以前の布にも防染技法が見られないというのがそれまでの定説だった。しかしここでは、防染による棒締め染めの技法が確立しており、氏族に伝えられた文様がダイナミックに染め抜かれている。

 機織の機械は大掛かりで、精巧な布を効率的に織ることが確立できるが、経糸と緯糸の交差が原則で、それを逸脱することができない。その点、手で加工するタパや編み細工は自在であり、奔放で複雑、多様で個性的なものを作ることができる。織物以前の布の姿を伝える文化を知ることによって、布イコール織布という「常識」をいったん捨て去ると、布をめぐる人間の営みや、装飾や衣の文化の由来や原点について、様々な示唆を得ることができる。

福本 繁樹




講演会

*申込受付は12月5日(火)からの10:00−16:00にて電話予約をお願いします。(定員40名)

12月19日(火)13:30−15:30
「南太平洋諸島を中心とする、衣の原点」 会費2500円
講師 | 福本繁樹

[染色家、民族藝術学会理事。2016年まで大阪芸術大学工芸学科教授。染色家であり染織などの工芸史、民族芸術を研究。1969年以来16回、南太平洋諸島を探査し、現地の暮らしや文化に触れ、収集とともに民族の装いを中心に記録を重ねる。著書に『南太平洋 民族の装い』(講談社)、『福本繁樹作品集 愚のごとく、然りげなく、 生るほどに』(淡交社)など]


2018年1月24日(水)13:30−15:30
「ベンガル地方のカンタ」 会費3000円

・現在サンディエゴのミンゲイインターナショナル美術館にてカンタ展が開催されています。
その際の講演者でもある氏が来日し、カンタの新たな調査結果をお話くださいます。

講師 | John Gillow *麻田美晴さんによる通訳あり
[染織研究家。世界中を駆け巡り、染織品の収集と研究を続け、数多くの染織本を出版している。
代表作に『World Textiles』『African Textiles』(Thames & Hudson)など]

★休憩をはさみ、14:45より氏の収集品のトランクショー (販売会)を開催いたします。
[お支払いは現金のみ]




ギャラリートーク

2月3日(土)=岡崎 真奈美(ティモール テキスタイル)

長年、インドネシアをフィールドワークされている岡崎さんに、
スラウェシ島の樹皮布についてお話して頂きます。

12月23日(土)・2月17日(土)=岩立 広子

1月13日(土)・3月3日(土)=廣田 繭子(学芸員)

いずれも10:30-11:30 予約不要、会費200円(別途入館料)、会員は無料
上記の日程以外でも、10名以上の団体を対象にギャラリートークを受け付けています。
ご希望の方は、事前にお申し込みください。