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「毛織り物 -フェルトから始まったテキスタイル」
2009年11月3日 - 2010年1月30日

皆様お変わりございませんか。一部屋だけの小さな美術館ですが、布を間近に見て、親しんで頂ける素晴らしい空間が出来上がりました。多くの方の御協力を心より感謝致します。第一回展は最初に人類の身を護った毛織物をテキスタイルの原点として紹介したいと思います。毛織物は日本の染織の伝統には馴染みの薄い織物だけに毛の質感や色彩は私達にとって、とても新鮮な魅力に富んでいます。まず、人類が最初に身に纏った毛織物に思いを廻らせましょう。人類の歴史は野生の動物の家畜化に成功し、毛皮や刈り取った毛は、寒さを防ぐ衣料や敷物に、肉は食用に使われました。最初に作った布は、刈り取った毛を弓で叩き、水をまき、素巻きにして上から押してフェルトを作り、色の付いた毛を文様にはめ込んだ敷物や袋は、宗教儀礼や魔除けにも使われました。その後、羊飼いや女達の手で、毛を紡ぐ事が始まり、織りや編みの技術向上で以前より丈夫で美しい布が織られる様になりました。動物の毛は高地に住む程、自身の保護の為、暖かい毛を産出します。標高三千m以上の高地に住む、パシュミナ山羊、ヤクの毛、また、南米ペルーのアンデスの高地に住むラクダ科のアルパカ、ビクーニャの毛からは、それぞれ上質の暖かい毛を産する事は自然の恩恵です。動物の毛には、それぞれ美しい自然色がありますが、その上、遊牧中に採取した天然染料が加わり、深く美しい色を引き出しました。今回はインドの最高の織技術を駆使した多彩なカシュミール州のショールとコート。初めて公開する、私の最初のコレクションの、プレインカの布。小品ですがじっくり見て下さい。その他、遊牧民の人達の織り上げた、アフガニスータン、トルコの新鮮な幾何文のキリムやテント用具、モロッコの庶民の力強い砂漠のウール。砂嵐の中で人々を護ってきた、ゴソゴソとした手触りの織りと大胆な文様のマント。初めて見るグルジアの民族衣装、また、この表の刺繍の敷物は、イラク南部の沼地に住んでいたマーシュ アラブの花嫁の持参品です。住んでいた沼地の水鳥や波文、古文字等が散りばめられた幸せな色彩。これも、戦争やダム建設で、いつしか掻き消されてしまったそうです。ゆっくり眺めて下さい。