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「絞り -糸で括るテキスタイル」
2010年8月12日 - 10月30日

 日本には美しい絞りの文化があります。着物を着なくなっても絞りの三次元のシワやにじみは魅力のあるものとして心に残っています。インドでは今でもこの絞りが、特にラージャスターン州やグジャラート州では普段着のベールやサリーとして、また婚礼用の晴着として使われています。
 絞りの始まりは、昔、遊牧民が歩きながら砂粒や種子を拾い、ウールの布に括り付け、小さな水玉文を考えたのが最初と聞きました。糸さえあればどこでも作業ができる手軽さが自給自足の暮らしには打ってつけだったのでしょう。やがて最初の単純な仕事から次第に薄い木綿地にも使われ、需要は都市部にも広がり、16〜19世紀、マハーラージャ達が愛用した薄いモスリン地のターバン、婦人達のベールは、バンダニと呼ばれる鹿子絞りからラハリアと呼ばれる布端を斜めから棒状に巻き上げる斜文や波文(ラハリアの意)、モトラと呼ばれる斜め格子文を表す世界に類のない技法を作り出しました。植物染料の優雅な色彩、シャープな直線は、今まで誰も見た事のない美しさで初めて見た時はびっくりしました。モスリンと呼ばれた薄地木綿と、代々世襲された職人の技の高さ、それを買い支えたマハーラージャ達の財力と美意識の結集です。また、庶民達の使ったウールや厚地木綿には、魔除けや吉祥を願って描いた力強い大胆な絞りがあり、生活の匂いが感じられます。
 その他、チベット族の厚地ウールの十字絞りにも高地に住む人々の独特の色彩と簡素な美しさが見られます。現代の絞りのサリーもご覧下さい。