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「豊かなインドの針仕事 -村の女性の縫い、刺繍、アップリケ」
2013年9月5日 - 12月21日

 今回は久しぶりのインドです。手仕事の宝庫だったインドも近代化と共に母から娘へと伝わってきた針仕事は急速に失われつつあります。しかし、政府やNGOの努力によって伝統の衣装こそ減りましたが、手仕事が商品作りに活かされる様になった今日では、都会の女性も伝統的手仕事に興味を持ち、インド各地に広まったのは素晴らしい事です。
 この度お見せするベンガル地方の白地のカンタは私が最初に出会った時、衝撃を受けた刺子です。清楚な白の使い古しのサリーを重ねて豊かな田園の生活を綴った楽しい刺子はベンガルの女性の心の布です。私がやっとその現場をバングラデシュの農村に探しあてた時、昔の様な個性にあふれた刺子は見つかりませんでしたが女性達は家計を助けたり、自立を目ざして屈託なく針をすすめていました。わずかに90才代の女性(出会った時は80代)が最後の世代らしく良い仕事を得意げに見せてくれました。
 パンジャーブ州のフルカリも消えてしまった見事な刺繍の一つですが、つい20年ぐらい前迄は、骨董屋の店先に山積みされていましたが、最近はそれもなくなりました。かつて豊かな穀倉地帯であったパンジャーブ州はシーク教徒の習慣で娘たちは婚礼までに、たくさんのベールを自家産の綿をつむいで織った布に色鮮やかな絹糸で、光り輝く花のベールに刺し、嫁ぐ時に持参する習慣があり、実にバラエティに富んだ刺繍が見られました。表紙の焦茶の地色のベールは、恐らく茜と藍で染めた手織りの布で、鮮やかな絹の色糸で、現代のアニメの様な人や動物が共存する楽しい世界で、思わず引込まれるてしまいます。
 その他、衣装についても半世紀前まで普通に使われていたものばかりです。手仕事は暮らしの反影に他なりませんから、世の中の変化と共に変わるのは当然なのですが、心を込めた刺繍の縫い目の一つ一つから次の世代に残されたメッセージを探して頂けたらと思いました。