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「華やかな刺繍布 スザニ -中央アジアの服装」
2015年8月6日 - 11月14日

 スザニは18世紀、中央アジアのオアシス都市ブハラで始まった刺繍布で主に婚礼時に壁やベッドを飾った白木綿地に華やかな大輪の花が一面に刺された布です。特徴のあるボハラ カウチングやチェーン ステッチを使い、太めの絹糸でみっしりと地紋を塗りつぶすように刺した厚みのある大胆な表現が、一度見たら忘れられない魅力的な刺繍布です。
 初めて見たスザニはアフガニスタンの首都カ—ブルで山積みされたキリムの前面に下げられたこの表紙の布です。ハッとする大胆さと美しさで人目を引きましたが、当時(1970年代)の日本の住宅事情を考えると、あまりにパンチがありすぎて、半ば諦め、通り過ぎました。でも、ヨーロッパの人達は宝物を発見した様な目で高価なその布を買い求めておりました。値段も高価で、私には手のでないものでしたが、好奇心からこの表紙に使った半分しか残っていないボロボロのスザニを手に入れました。
 その後、完品のスザニも買える様になり、この布は半分というせいもあり、ほとんど展示したことはなかったのですが、取り出して眺めてみて驚きました。大きな花はカーネーションと思われますが、小さなとがった花弁の花は恐らくザクロで、両方とも豊穣のシンボルと云われます。その後、パキスタンに難民となって移住してきたアフガン人のバザールの中で、再び違うタイプのスザニに出合い、今まで見たスザニとは全く異なる天体を表した大胆なデザインに驚き、私の興味は再燃しました。1991年、広大なソ連邦が一気に瓦解し、スザニの故郷、ウズベキスタンはやっと独立国となり、10年後には旅行も可能になりました。
 晴れて、夢にみたトルクメニスタン、ウズベキスタンを訪れたのは1997年の秋でした。乾いた空気、青い空にそびえ立つモスクやミナレットの青いタイル、かつての華麗な都市は長いソヴィエト時代の抑圧により手工芸はすっかり萎えてしまっていましたが、職人達も再び、絣や刺繍を取り戻そうと必死でした。トルクメニスタンでは、精緻な刺繍のチャパン(上衣)の作り手に出会ったり、見事な小物類(帽子や小袋、魔除け)は、古いものですがどれも見事な刺繍の逸品を多数並べます。