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「白の世界 -インド、アフリカ、アフガニスタン、日本の衣装」
2015年4月16日 - 7月18日日

 インドでは、歴代の王族が身につけた薄い、霞のようなモスリンと呼ばれた薄織物があります。ベンガル地方の肥沃な土地の恵みと太陽そして湿度で、極細糸が熟練した職人達の手で紡がれ、織られ、最高の薄布を作り出しました。ミニアチュアの絵に見る宮廷衣装のほとんどはこのモスリンで、金彩で飾られ、それがどれほど高価なものかは想像もつきません。細い糸を紡ぎ出すには、早朝または水盤の上で紡がれ、更に真白に晒すには一週間もかけて、木綿本来の色を強い太陽の光りと流れる水で純白になるまで晒したのです。前回、西岡由利子氏にサンガネールでのリポートで教えて頂きました。
 今回、表紙のジャムダニ織りのサリーは、正に晒された白糸で縫い取られた、花織物(ジャムダニの意)を表現しています。ラクノウの藩主は、イスラーム系でしたがこの様な暑い国で金や銀の重い衣装より薄地木綿で身を包んだ方がはるかに清々しいと云い、このモスリン地に白糸でデリケートな文様を縫いとった服を好まれました。この刺繍はチカンカリと呼ばれています。
 一方、アフガニスタン北部の山岳地帯に住むパシャイ族のドレスは、太番手の綿糸で地厚に織られた布に刺子を施し、藍色の絹糸で前身頃を飾った、庶民の日常着の傑作です。
 その他、遊牧民の子供用フェルトコートは動物文の刺繍が楽しく、イランのウール地にピアノの鍵盤文様の綴織のチュガ(上衣)も、親子がこれを着て山野を歩く姿が目に浮かびます。アフリカからは、モロッコのベルベル族の薄地ウールの婚礼用巻衣装をお見せします。青や燕脂の小さなボンボンが楽しいです。ナイジェリア、ハウサ族のオープンワークのベール、マリの儀式用の文字が書かれたユニークなコートは宗教的な文言で埋められています。日本では木綿のなかった時代、苧麻や大麻を白く晒すことでやわらかくして使っていたそうです。私たちの知らなかった木綿以前の話を、再び吉田真一郎先生にお願い致しました。貴重な布も先生から拝借し、展示させて頂きました。 以上、見逃せない布が数々あります。白は全てのものを浄化する新雪の様で、素晴らしい色です。ぜひお出かけください。